ESRS改訂版の変更点を一覧で解説 統合・削除・維持された項目とは

CSRD(企業サステナビリティ報告指令)をはじめとするサステナビリティ関連規制の見直しを目的としたオムニバス法案が、欧州議会およびEU理事会で承認され、CSRDの適用時期や対象範囲の見直された。これに伴い、CSRDに基づく開示基準であるESRS(欧州サステナビリティ報告基準)についても、企業の報告負担軽減を目的とした改訂作業が進められている。
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EFRAG(欧州財務報告諮問グループ)は、ESRSの見直しを実施中であり、2025年12月には開示項目の削減や統合を含む改訂版ESRS(Draft Simplified ESRS)を公表した。今回の改訂では、多くの方針(Policy)、行動(Action)、目標(Target)に関する開示要求がESRS 2へ統合されるほか、一部の財務影響開示や詳細な定量指標の削除が提案されている。
CSRDの適用対象となる企業や、欧州サプライチェーンに関わる企業にとっては、「どの項目が維持されるのか」「どの項目が統合・削減されるのか」を把握し、自社への影響を整理することが重要である。本記事では、ESRS E1~E5、S1~S4、G1を対象に、改訂版ESRSにおける変更点を整理した一覧表を作成した。「ESRS開示項目リスト(変更点解説付き)」制度動向の把握や社内の影響分析に向けた参考資料として活用いただきたい。
※本資料はEFRAGが2025年12月に公表した改訂版ESRS(Draft Simplified ESRS)を基に作成している。2026年6月3日に終了した欧州委員会の意見募集におけるコメント反映前の内容を整理したものであり、今後の制度設計によって開示要件が変更される可能性がある点に留意されたい。
ESRS改訂(トピック別)のポイントとは
今回の改訂において、温室効果ガス排出量や気候目標、人権関連指標など、投資家の意思決定に重要な項目については引き続き維持される方向である。
環境領域では、IFRS S2との整合や気候関連開示の簡素化、水資源・生物多様性・循環経済に関する開示要件の見直しが提案されている。
社会領域では、人権インシデントや労働関連指標について、重要なサブトピックを中心とした開示への見直しが進められているほか、適切な賃金に関する考え方も追加されている。
また、ガバナンス領域では、贈収賄・腐敗に関する開示要件、中小企業(SMEs)への支払い条件に関する開示要件の考えかたも示された。本資料では、こうした改訂版ESRSの主要な変更点を一覧形式で整理している。
以下、「ESRS開示項目リスト(変更点解説付き)」の一覧表において、各開示項目について「統合」「維持」「軽減」「削除」の区分を示すとともに、従来要件と改訂案の差分を整理している。
ESRS簡素化案では何が変わるのか:ESRS開示項目リスト
「ESRS開示項目リスト(変更点解説付き)」では、ESRS E1~E5、S1~S4、G1の各開示要求について、以下の観点で比較している。
- 従来求められていた開示内容
- 簡素化後の方向性
- 維持される項目
- 統合される項目
- 削除される項目
今回の改訂案では、多くの方針(Policy)、行動(Action)、目標(Target)に関する開示要求がESRS 2へ統合されているが、開示要件から外れたわけではない点には留意が必要である。エネルギー、従業員、サプライチェーンなど、個別に細かな方針・計画/目標を繰り返し開示する必要はないが、包括的に開示する必要がある。方針は、環境・社会など総合的にコミットメントを示すことが可能になると考えられるが、一部重要とされるトピック(強制労働・児童労働など)については、明確にコミットメントを示す必要があるだろう。
各項目ごとの変更点は一覧表にまとめているので参考にしてほしい。ESRS E1~E5、S1~S4、G1を縦軸にそれぞれの変更点をまとめている。
*ダウンロード資料は、2026年7月3日の正式採択を受けて一部内容を修正している。
ESRS簡素化の背景
EFRAGでは、ESRSの開示要求について主に以下に基づき進めている。
- 重複開示の削減
- 定量指標の合理化
- 財務的影響開示の削除
- ESRS 2への統合
簡素化は進みつつあるものの「ESRS対応が不要になる」ということではない。むしろ「重要情報により集中した開示へ再構成される」と理解することが重要である。
まとめ(今後の対応に向けて)
ESRS簡素化後、自社(欧州子会社など)が、対応を進める上で重要なポイントは以下のとおりである。
- ESRSとのギャップを整理:現在収集しているデータや開示項目について、どの要件が維持され、どの要件が削除・統合されるのかを整理するとよいだろう。
- 維持される重要指標への対応を優先:温室効果ガス排出量、エネルギー使用量、人権関連指標、労働安全衛生指標などは引き続き重要な開示項目として残る見込みである。制度対応に関係なく重要な指標でもあるので、継続的なデータ収集体制の構築が求められる。
- EFRAGの動向を継続的に確認:今回の資料は2026年6月時点で公表されている簡素化案を基に整理したものである。今後の制度設計によって変更される可能性もあるので、最終的な制度確定まで、継続的な情報収集を行うことが重要である。
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<執筆者>

竹内愛子
国際関係学に関する修士号を取得。総合コンサルティングファームにて、システムおよび戦略コンサルティングに従事した後、Big4ファームのアドバイザリー部門にて、ガバナンス・リスクマネジメントや統合報告に関する企業向け支援に携わる。
2022年より ESG Journal にて、サステナビリティ経営の観点から、情報開示実務やそれを支えるシステム活用をテーマに、オリジナル解説およびホワイトペーパーの執筆を行っている。

